個人開発SNSはなぜ広がる? 市場規模・需要・インタビューから読み解く成長の背景
Image:Meax
X(旧Twitter)やInstagram、TikTokといった大手SNSが依然として圧倒的な存在感を放つ一方で、ここ数年、個人が開発・運営する小規模なSNSが静かに存在感を増している。
特定のコンセプトに特化したもの、鍵アカウントのみで構成されるもの、少人数のコミュニティ向けに設計されたものなど、その形態は多様だ。大手プラットフォームが持つ巨大な資本やユーザー基盤がなくても、なぜ個人開発のSNSが生まれ、一定の支持を集められるのか。今回、個人開発SNS「Meax」の開発者であるうまいだんご氏への取材をもとに、その実態と背景にある市場を紐解いて行こう。
Meaxという個人開発SNS
Meaxはうまいだんご氏が2025年から開発を続けているSNSで、現在も運営が継続されている。
直近の月間アクティブユーザー数(MAU)は497人、日間アクティブユーザー数(DAU)は20人から40人ほどとのことで、大手SNSと比較すれば決して大きな規模ではない。
ただし、Cloudflareのウェブ分析によるアクセス数は7220回に達しており、登録ユーザー以外の閲覧も含めた露出は一定の広がりを見せている。
開発にあたっては、Gemini、GitHub Copilot、Claude、ChatGPT、Raptorなど複数のAIツールを組み合わせて活用しているという。個人開発でSNSのような複雑なシステムを一から作り上げるのは本来相応の技術力と時間を要するが、AIによるコーディング支援やレビュー支援が普及したことで、個人でも実用に耐えるサービスを短期間で構築しやすくなっている。収益面では、独自に用意したポスト広告に加え、外部の広告サービスも組み合わせることで、運営を継続できる基盤を作っている様子がうかがえる。
コンセプト特化型SNSが増えている背景
Meaxのように、特定のコンセプトを掲げて開発される個人SNSは近年目立って増えている。
たとえば、投稿がすべて鍵アカウント設定になっているという設計思想のもとで開発された「snooze」のように、既存の大手SNSでは実現しづらい仕様をあえて前面に押し出すサービスが登場している。
大手SNSが不特定多数への発信や拡散を前提に設計されているのに対し、個人開発のSNSは開発者自身が欲しいと思った体験や、既存サービスに感じていた不満を出発点にすることが多く、結果として尖ったコンセプトを持つサービスが生まれやすい。
こうした動きの背景には、開発のハードルが下がったことに加え、大手SNSに対するユーザー側の疲弊感もあると考えられる。フォロワー数やエンゲージメントを競うような設計に息苦しさを感じ、もっと小さく気楽に使えるSNSを求める声は以前から存在していた。個人開発者はそうしたニッチな需要を素早く形にできる立場にあり、大手が動きにくい領域で独自の価値を提示しやすい。
オープンソースSNSの普及とセルフホストの広がり
個人や小規模チームがSNSを構築する際の選択肢として、Misskey、Mastodon、BlueskyといったオープンソースまたはオープンプロトコルベースのSNSソフトウェアの存在感が増している。
これらはActivityPubなどのプロトコルを用いた分散型の仕組みを持ち、企業や個人が自前のサーバーを用意することで独自のコミュニティ空間を運営できる。実際、趣味のコミュニティ単位でMisskeyサーバーを個人的に構築し、数年にわたって運用を続けているユーザーの事例も見られるようになった。
以前はサーバーの構築や運用に相応の知識が求められたが、近年はサーバーの専門知識がなくてもMisskeyやMastodon、Blueskyの環境を数クリックで用意できるホスティングサービスも登場している。
こうしたサービスの普及により、以前よりSNS運営への参入障壁は下がった。ただし、参入がしやすくなったこと自体が競争を激しくしている面もある。似たようなコンセプトのSNSが複数同時に立ち上がることも珍しくなく、ユーザーの可処分時間を奪い合う競争は以前にも増して厳しさを増している。
大手SNSとの違いはどこにあるのか
大手SNSと個人開発SNSの最も大きな違いは、意思決定のスピードと運営思想にある。
大手SNSは巨大なユーザー基盤を抱えるがゆえに、仕様変更ひとつをとっても多くの利害関係者への配慮が必要になる。一方、個人開発SNSは開発者の意思がそのままサービス設計に反映されやすく、ユーザーからのフィードバックを踏まえた変更も比較的スピーディーに行える。
また、大手SNSが広告収益の最大化やユーザー滞在時間の最大化を重視する傾向にあるのに対し、個人開発SNSの多くは必ずしも規模の拡大だけを目的にしていない。Meaxのように収益源を確保しつつも、開発者自身が心地よいと感じるコミュニティのあり方を模索しているケースは少なくなく、この点も大手SNSとの明確な違いといえる。
もっとも、収益基盤が脆弱な個人開発SNSは、サーバー費用や開発者自身のモチベーション維持といった継続性の課題を常に抱えており、長期的な運営には工夫が求められる。
SNS市場規模の拡大が個人開発の土壌を後押し
個人開発SNSが生まれやすい環境の背景には、SNS関連市場全体の拡大がある。サイバー・バズとデジタルインファクトが実施した調査によると、2024年の国内ソーシャルメディアマーケティング市場規模は1兆2038億円で、前年比113%に伸長したことが明らかになっている。
この市場はソーシャルメディア広告が全体の89.1%を占める1兆727億円、インフルエンサーマーケティングが860億円などで構成されており、2029年には2兆1313億円に達すると予測されている。
市場全体がこれだけ拡大しているということは、SNSを起点とした広告出稿やマーケティング投資の受け皿が増え続けているということでもある。個人開発SNSがMeaxのように独自のポスト広告や外部広告を組み合わせて収益化を図れる背景には、SNSという媒体自体への広告需要が年々高まっている事情がある。ユーザー数が小規模であっても、特定のコンセプトに共感する濃いユーザー層を抱えるSNSであれば、それに見合った形の広告マネタイズが成立しうる土壌が整いつつあるといえる。
オープンなSNSだけでなくクローズドなSNSも拡大
個人開発SNSの潮流を語るうえで見逃せないのが、オープンな拡散を前提としないクローズド型SNSの広がりだ。代表例として挙げられるのがBeRealで、通知が届いてから決められた時間内にその場の様子を撮影して投稿するという仕組みを持ち、友人同士の親しい関係の中だけで完結するソーシャルグラフを特徴としている。
SHIBUYA109エンタテイメントの調査では、Z世代の間でスクリーンショットや拡散のリスクを気にする声が増えており、こうした意識の変化が安全性を確保しやすいクローズドなSNSへと主流が移りつつある要因のひとつとみられている。
BeRealのようなクローズドSNSは、不特定多数に向けた発信を前提とする大手SNSの疲れから逃れたいというニーズを的確に捉えたサービスといえる。個人開発SNSの中にも、鍵アカウントのみで構成されるsnoozeのように、あえて公開範囲を絞り込むことでユーザーに安心感を提供しようとする設計思想が見られ、大手のオープンSNSとクローズドSNSという二極化した潮流の双方に、個人開発の余地が生まれている。
Meaxの事例が示すように、個人開発SNSはAIツールの普及によって開発コストが下がったこと、オープンソースのSNSソフトウェアやホスティングサービスの充実により運営のハードルが下がったこと、そしてSNS関連市場全体が拡大を続けていることなど、複数の要因が重なって成立している。大手SNSにはない機動力や、開発者自身の思想を反映した設計は、規模では測れない独自の価値を生み出している。一方で、参入障壁が下がったぶん競争は激しく、継続的な運営には収益化の工夫と根気が欠かせない。
今後も、コンセプトを絞り込んだ個人開発SNSとクローズド型SNSの双方が、既存の大手プラットフォームとは異なる形でユーザーの居場所を提供し続けていくとみられる。
出典・協力:Meax https://meax.jp
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