Fable5がサブスク延長、GPT5.6が登場、Grok4.5も一般公開へ

生成AIの主要3陣営がほぼ同じタイミングで大きな動きを見せた。Anthropicは最上位モデル「Claude Fable 5」の追加料金なし利用期間をで5日間延長し、OpenAIは政府審査を経て「GPT5.6」シリーズの一般公開に踏み切ることを発表、そしてイーロン・マスク氏が率いるxAI(SpaceXに統合、現在はSpaceXAI)も「Grok 4.5」の一般提供開始を明らかにした。いずれも7月7日から9日にかけて相次いで公表された動きであり、三社三様の事情を抱えながらも、フロンティアモデルの公開がもはや発表だけで完結せず、政府審査や需要変動に応じて提供条件が絶えず調整され続ける局面に入ったことをうかがわせる。

Fable 5、土壇場の5日間延長

Anthropicは7月7日(現地時間)、最上位の「Mythosクラス」モデル「Claude Fable 5」について、有料サブスクリプションプラン内で追加料金なしに利用できる期限を、当初の7月7日から7月12日午後11時59分59秒(太平洋時間)まで5日間延長すると発表した。
日本時間では7月13日午後3時59分59秒にあたる。対象はPro、Max、Teamおよび一部のシートベースEnterpriseプランで、週間利用上限の最大50%までをFable 5の利用に充てられる。特別な申し込みや有効化の操作は不要で、既存のサブスクリプション料金以外の追加支払いも発生しない。

Fable 5を巡ってはここまで波乱含みの展開が続いてきた。Anthropicは6月9日にFable 5を公開したが、その3日後の6月12日、Amazonの研究者が安全対策を回避する手法を報告したことを受け、米国商務省の輸出規制命令によってアクセスが全面停止される事態となった。この規制は本来、外国籍のユーザーを対象にしたものだったが、Anthropicが国籍をリアルタイムで検証する手段を持たなかったため、結果としてすべてのユーザーが利用できなくなった。約3週間に及ぶ停止を経て、6月30日に商務省が緊急輸出命令を解除し、Fable 5は7月1日、世界中のユーザー向けに再公開された。Claude.ai、Claude Code、Claude Cowork、Claude Platform/APIなど各プラットフォームで利用可能となり、再公開と同時にPro、Max、Teamなどの契約者向けに、週間利用上限の50%まで追加費用なしで使える期間限定のプロモーションが用意されていた。

当初の期限は7月7日までとされていたが、切れる直前にAnthropicが5日間の延長を発表した形だ。期限を過ぎるとFable 5はサブスクリプションの週次上限には含まれなくなり、利用クレジットを購入することでのみ継続利用が可能になる。

価格は入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルで、これはAnthropicの現行モデル「Claude Opus 4.8」の入力5ドル・出力25ドルと比べてちょうど2倍の水準にあたる。なお、Fable 5と同時に停止されていた「Mythos 5」は、今回の延長を含む一連の一般向けプロモーションの対象には含まれていない。Anthropicのエンジニアは、データセンターの処理能力に余裕ができ次第、Fable 5をできるだけ早く通常のサブスクリプション機能として復帰させたい考えをX上で示しているが、具体的な復帰時期は明らかにされていない。週次利用上限のリセットタイミングと今回の延長期間が噛み合わず、「使いたくても上限リセットを待たなければならない」といった利用者の不満も出ている。

GPT5.6、政府承認を経て一般公開へ

OpenAIは6月26日、次世代モデル「GPT5.6」シリーズを発表した。今回のシリーズでは命名方式が刷新され、数字がモデルの世代を、「Sol」「Terra」「Luna」という固有名が能力の階層を示す方式に変わった。旗艦モデルのSol、日常業務向けにバランスを取ったTerra、高速かつ低価格なLunaという3層構成で、この階層名は今後の世代でも継続して使われる方針だという。価格は100万トークンあたり、Solが入力5ドル・出力30ドル、Terraが入力2.5ドル・出力15ドル、Lunaが入力1ドル・出力6ドルに設定されている。ベンチマークでは、コマンドラインワークフローを評価する「Terminal-Bench 2.1」で最高水準の性能を記録したほか、ゲノム解析など生物学分野のワークフローを測る「GeneBench v1」でも前モデルのGPT5.5を上回る結果を、消費トークン数を抑えつつ達成したとされる。サイバーセキュリティ分野の「ExploitBench」では、Anthropicの「Mythos Preview」に匹敵する性能を約3分の1のトークン数で達成したという。一方で第三者評価機関METRの事前評価では、評価を有利に進めるための不正の検出率が、これまで同機関が調べたどの公開モデルよりも高かったとの指摘も出ている。

発表当初、GPT5.6は米政府との調整を理由に、政府が承認したおよそ20の信頼できるパートナー組織に限ってAPIおよびコーディング支援ツール「Codex」経由のプレビュー提供が始まった。これはトランプ政権が発令した大統領令に基づく枠組みで、フロンティアモデルを開発する企業に対し、信頼できるパートナーへの提供に先立って政府に最大30日間のアクセスを与えるよう求めるものだ。OpenAIはこの段階的な公開方針について、新製品を出荷する理想的な方法ではないと公に不満を示していたが、商務省内に設置されたAI標準・イノベーションセンター(CAISI)による数カ月にわたる安全性テストと、ワシントンD.C.に技術専門チームを常駐させるほど集中的な折衝を経て、7月7日、商務省から広範な一般公開の承認を取得したと発表した。一般公開は現地時間の木曜日、つまり7月9日に始まる見通しで、日本時間では7月10日にあたる。OpenAIは同日、プレビューアクセスを全世界に拡大していることも明らかにしている。なお、Sol・Terra・Lunaという名称は暗号資産の「Solana」や2022年に破綻した「Terra/Luna」を連想させるとして一部で話題になったが、OpenAIは単に能力の階層を示す名称であり暗号資産とは無関係だと説明している。

Grok 4.5、プライベートベータから一気に一般提供へ

xAIを率いるイーロン・マスク氏は6月28日、次期フラッグシップモデル「Grok 4.5」がSpaceXとTeslaの社内チームでプライベートベータとして稼働を始めたことをX上で明らかにした。新モデルは新基盤「V9」を採用し、パラメータ規模は約1.5兆で、これまでの主力モデルを支えてきた「v8-small」アーキテクチャ(約5000億パラメータ)のおよそ3倍にあたる。V9自体の事前学習は5月26日に完了しており、その後の追加学習の段階でコーディング支援ツール「Cursor」のデータを組み込み、コーディングや技術的な推論能力の強化を図ったという。マスク氏は「初期評価ではOpusに近い、あるいはそれを上回る性能を示している」とXに投稿したが、この評価はあくまでSpaceXとTeslaの社内で行われたものであり、第三者による公開ベンチマークは今のところ存在しない。マスク氏はまた、強化学習による改善が続いていることや、xAIの社内コーディング基盤「Grok Build」も日々進化していることに触れたうえで、完全にゼロから学習した新しい基盤モデルを2026年末まで毎月リリースする構想も明らかにしている。

Grok 4.5は当初5月下旬の公開が見込まれていたため、実際の展開はおよそ1カ月遅れとなった。xAIはこれまでも次世代モデルの公開時期を繰り返し後ろ倒ししてきており、後継となる「Grok 5」も当初2025年後半の予定が第1四半期、第2四半期と延期を重ねている。今回のGrok 4.5についても、長らく公開時期の確約は示されていなかったが、7月に入るとGrok Web版のUIやコーディングエージェント「Grok Build」上にモデル名を示唆する表示が相次いで見つかり、公開が近いことをうかがわせていた。そして7月8日、マスク氏は改めてX上でGrok 4.5を7月9日に一般公開すると表明した。マスク氏はGrok 4.5を「Opusクラス」のモデルと位置づけつつ、Anthropicの主力モデルと比べて「より高速で、トークン効率が良く、低コストだ」と説明している。現行の公開モデルである「Grok 4.3」は4月30日にAPIで一般公開されたモデルで、100万トークンのコンテキストウィンドウとxAI初のネイティブ動画入力対応を備える。Grok 4.5がどの料金プランから利用可能になるかは本稿執筆時点で確定情報がないが、xAIのこれまでの慣行に照らせば、まずSuperGrokやSuperGrok Heavyといった上位プランの契約者から順次開放される可能性が高いとみられる。

三者三様の事情に共通する構図

3社の動きが同じ週に重なったのは偶然の要素も大きいが、その背景を辿ると共通する構図も浮かび上がる。GPT5.6の一般公開に先立つ限定プレビューは、Anthropicが6月にFable 5とMythos 5で経験した政府主導の提供制限と同じ枠組みによるもので、両社とも高度なAIモデルの公開において、正式で統一的な安全基準がまだ整わないまま、個別審査が事実上の標準になりつつある現状に直面していた。一方でGrok 4.5の場合、公開時期を左右してきたのは政府審査よりも自社の開発スケジュールの遅れであり、性格はやや異なる。それでもフロンティアモデルの主要3陣営が同じタイミングで利用条件や公開範囲を動かしたという事実は、生成AI業界がモデルを発表すれば終わりという段階を過ぎ、公開後も規制対応や需要変動に応じて提供条件が絶えず見直され続ける局面に入ったことを物語っていると言えるだろう。

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1 件のコメント

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ぬこぬこ

これはうれしいです

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