Gemini Intelligenceが登場。GoogleはAndroidをOSからインテリジェンスシステムへと作り直す
Googleは2026年5月12日、Google I/O 2026の前週に開催した「The Android Show: I/O Edition」において、「Gemini Intelligence」を正式に発表した。これはAndroidに対してGeminiを従来のアシスタント機能の延長として追加するというアプローチをやめ、OS全体の根幹にAIを埋め込んでいくという抜本的な戦略転換を意味する。Googleのサミール・サマット氏(Android担当VP)は発表の場で「私たちはオペレーティングシステムからインテリジェンスシステムへと移行している」と述べ、Androidの新たな方向性を端的に表現した。
OSを超えた「インテリジェンス層」の誕生
Gemini Intelligenceとは、特定のアプリや機能を指すのではなく、Androidデバイス上でGeminiが担う包括的なAI機能フレームワークの名称だ。Googleはこれを「エージェンティックAI」と表現しており、従来の質問に答えるだけのアシスタントモデルとは一線を画す。ユーザーが何かを問いかける前に状況を把握し、複数のアプリをまたいだ作業を自律的に完遂できるシステムを目指している。
具体的な動作として、Googleはいくつかのデモを公開した。メモアプリに書かれた買い物リストを長押しするだけでGeminiに指示を出し、Instacartなどのショッピングアプリのカートに全商品を自動追加させるといった操作がその一例だ。旅行パンフレットを撮影してExpediaで同様のツアーを検索させたり、スピンクラスの前列席を自動で予約させたりと、複数ステップにわたる作業を単一の指示で処理できるようになる。いずれの場合も、最終的なアクション実行前にユーザーが確認する仕組みになっており、Googleはプライバシーと制御の維持を繰り返し強調した。
こうした機能はMaterial 3 Expressiveと呼ばれるGoogleの最新デザイン言語に沿って実装されており、余計な注意を散らさないための意図的なアニメーションが取り入れられている。
ChromeがAIブラウザへと変貌する
Gemini Intelligenceの中でとりわけ注目される領域の一つが、ブラウザとAIの融合だ。Googleは6月末から、Android向けChromeにGeminiを本格統合すると発表した。この機能はGemini 3.1をベースとしており、Android 12以降かつRAM 4GB以上の端末に順次配信される予定だ。
ChromeのツールバーにGeminiアイコンが追加され、ユーザーは現在表示しているウェブページについてそのままAIに質問できるようになる。長文記事の要約や、複数ページにまたがる情報の比較、複雑なトピックの説明といった操作を、タブを切り替えたりコピーペーストしたりすることなくその場で完結させられる。
さらに強力なのが「Chrome Auto Browse」と呼ばれるエージェント機能だ。駐車場の予約や定期注文の更新といった単純なウェブ上の作業を、ユーザーの代わりにGeminiが実行する。イベントチケットに記載された日時から駐車場を自動で手配したり、画像に映った商品を識別して類似アイテムをカートに追加したりといった多段階のワークフローをこなす。センシティブな操作については確認ステップを挟む設計になっており、Google Password Managerと連携すればサインインが必要なサービスでの自動操作も可能になる。
「Personal Intelligence」はオプトイン形式のパーソナライズ機能で、ユーザーが接続を許可したGmailやカレンダーなどのGoogleアプリから情報を取得し、フォーム入力やウェブ上の回答をよりコンテキストに即したものにする。たとえばパスポートアプリを連携させておけば、フォームのパスポート欄をワンタップで自動入力できる。この機能はいつでも設定からオフにでき、収集データの範囲はユーザーが管理できる。
声をテキストに整える「Rambler」
音声入力の精度を劇的に高める機能として、GboardにRamblerが加わる。Geminiモデルがユーザーのリアルタイムな発話を解析し、「えー」「あの」といった言い淀みや繰り返し、未完成のフレーズを自動的に除去して、整理された文章として出力する。単純な音声テキスト変換ではなく、話者の意図を解釈して文章を再構成するという点でこれまでの音声入力とは異なる。また、複数言語が混在した入力にも対応するとGoogleは述べており、多言語環境でのコミュニケーションにも実用的に機能するとみられる。
自然言語で生成するウィジェット
「Create My Widget」は、テキストプロンプトだけでホーム画面のウィジェットを自動生成する機能だ。「毎週、高タンパクな食事プレップレシピを3つ提案して」や「風速と降水量だけ表示して」といった指示文を入力するだけで、Geminiがウェブ上の情報やGmail、カレンダーなどのGoogleアプリからデータを引き出し、ウィジェットを組み立てる。生成されたウィジェットはリサイズやホーム画面への配置が可能で、将来的にはWear OSのタイルにも同様の機能が提供される。フライトや宿泊、レストラン予約など旅行に関する情報を一箇所にまとめたウィジェットや、カウントダウンタイマーを組み込んだカスタム表示なども実現できるとGoogleはデモで示した。
Chromebookの後継機「Googlebook」が登場
Gemini Intelligenceはスマートフォンにとどまらず、全く新しいカテゴリのデバイスを生み出した。GoogleはAIを前提として設計されたノートPC「Googlebook」を発表した。ChromeOSベースのChromebookから進化したものとして位置づけられており、Gemini IntelligenceをOSの中核に据えることで従来のラップトップとは一線を画すと説明されている。
Googlebookの象徴的な機能の一つが「Magic Pointer」だ。マウスカーソルを左右に振ると、画面上のどの要素に対してもGeminiの文脈的な提案がポップアップ表示される。メール内の日付にカーソルを合わせれば会議のセットアップを提案し、家のリビングルームと新しいソファの画像を同時に選択すれば、インテリア配置のビジュアルを即座に生成するといった操作が可能になる。デスクトップのカーソル操作そのものをAIのインターフェースとして再定義しようという試みだ。
AndroidスマートフォンとのシームレスなIntegrationもGooglebookの柱の一つで、「Cast My Apps」機能によりスマートフォン上のアプリをそのままノートPCの大画面で利用できる。食事の注文や語学学習アプリへの切り替えなど、作業の流れを断ち切らずに端末をまたいで操作できる。ファイルブラウザでは、スマートフォン本体に保存されたファイルをPC側から直接閲覧・挿入することも可能だ。
ハードウェアパートナーとしてAcer、ASUS、Dell、HP、Lenovoが参加しており、初代Googlebookデバイスは2026年秋に登場する見込みだ。Chromebookとの関係については、2021年以降に発売されたデバイスに対して最大10年間のソフトウェアサポートを継続すると明言しており、今後多くのChromebookが新しいGooglebook体験へと移行できるとしている。
競合への対抗という文脈
Gemini Intelligenceの発表は、Apple WWDC 2026の数週間前というタイミングを狙ったものと分析されている。AppleはすでにGoogleと提携してGeminiをApple Intelligenceの一部として採用しており、4か月前の提携発表以来、より高度なAI機能の実装を市場から求められている状況だ。Alphabetの株価はこの1年で140%超上昇しており、投資家もGeminiが日常的なプロダクトの中心に据えられることへの期待を株価に反映させている。
また、MicrosoftはCopilot+ PCというコンセプトを2024年に打ち出したが、消費者の購買に大きくつながらなかった経緯がある。Engadgetはその類似性を指摘しつつ、「GeminiとGooglebookが受け入れられるかどうかは今後数年で判明する」と慎重な見方を示している。
展開スケジュールと対応デバイス
Gemini IntelligenceはまずSamsung Galaxy S26シリーズとGoogle Pixel 10シリーズに夏から搭載される。その後、Wear OSスマートウォッチ、Android Auto対応カーナビ、Androidベースのスマートグラス、そしてGooglebookへと段階的に拡大していく。ChromeのAuto Browseは6月末からAI ProおよびUltraサブスクライバー向けに米国で先行展開され、Android 12以降のデバイスが対象となる。
Androidは誕生から約18年を経て、アプリの起動と手動操作を中心とした設計から、AIが操作の多くを担う「インテリジェンスシステム」へと根本的な再設計の段階に差し掛かった。Gemini IntelligenceはGoogleの野心を示す新たな枠組みであり、I/O 2026本番(5月20日)でさらなる詳細が明らかになる見込みだ。
https://blog.google/products-and-platforms/platforms/android/gemini-intelligence
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