DRAM指数、一ヶ月で7.85%アップ、背景にあるのは
「DRAM指数」と呼ばれることの多いRoundhill Memory ETF(ティッカー:DRAM)が、直近一ヶ月でおよそ7.85%上昇した。2026年8月12日の終値54.80ドルに対し、9月11日の終値は59.10ドル。数字だけを見れば堅調な一ヶ月に映るが、この間の値動きの中身はかなり荒い。そして上昇の背景にあるのは、AIサーバー需要が汎用メモリの供給を押しのけ続けている構造と、その構造に対して市場が抱き始めた「そろそろ限界ではないか」という警戒感の綱引きである。
そもそもDRAM ETFとは何か
Roundhill Memory ETFは2026年4月2日に上場した、米国初のメモリ専業ETFである。経費率は0.65%で、アクティブ運用型。名称に「Memory」とある通り、DRAMとNANDの生産に関わる企業へ集中的にエクスポージャーを取る設計になっている。
保有構成を見ると、Samsung Electronicsが18.80%、SK hynixが16.21%、Micron Technologyのスワップが16.15%と、上位3社で過半を占める。さらにSamsungとSK hynixについてもスワップ経由のポジションが上乗せされており、実質的な3社集中度は7割を超える。残りはSandisk(4.93%)、Seagate Technology(4.58%)などが続く。特徴的なのは、米国短期国債(Tビル)が25.93%と11.69%の二本立てで組み入れられている点で、これはスワップを使って株式エクスポージャーを合成する際の担保として機能している。上位10銘柄の合計が118.84%と100%を超えるのはこのためだ。
運用資産は9月時点でおよそ257億ドルから265億ドル。上場からわずか5ヶ月で200億ドル超を集めたことになる。設定来のリターンは100%を上回っており、2026年のETF市場で最も注目を集めた新規商品のひとつと言っていい。
7.85%という数字が隠しているもの
問題は、この7.85%が「なだらかに積み上がった7.85%」ではまったくないということだ。
8月12日に7.68%上昇した後、17日にはさらに5.36%上げて60.39ドルまで到達した。ところが翌18日には8.76%の急落。24日にも5.89%下げ、その後20日に4.43%、25日に3.61%と切り返す。9月に入っても1日に3.23%下落、10日には約4.9%の下げを記録している。日次で5%から9%の変動が当たり前に起きる状態が一ヶ月続いた末の、差し引き7.85%というのが実態である。
より重要なのは、52週レンジが26.14ドルから81.34ドルという事実だ。6月下旬に付けた81.34ドルの高値から見れば、9月11日の59.10ドルは依然として3割近く低い水準にとどまる。つまり直近一ヶ月の上昇は、7月から8月上旬にかけての急落からの戻り局面という性格が強い。8月3日には47.68ドルまで沈んでおり、そこを起点に取れば1ヶ月で2割以上の上昇になる。どの日を基準に切り取るかで印象が大きく変わる銘柄であり、「一ヶ月で7.85%」という数字を読む際にはこの点を差し引いて考える必要がある。
上昇の土台にあるDRAM市況
値動きの荒さとは別に、このETFを押し上げている実体経済側の材料は明確だ。
TrendForceが9月7日に公表した調査によれば、2026年第2四半期の世界DRAM業界売上高は前四半期比59.5%増の約1547億3000万ドルに達した。汎用DRAM契約価格の大幅な上昇が牽引した結果である。企業別ではSamsungが売上高609億8000万ドル、前四半期比63.4%増でシェア39.4%と首位。Micronは65.5%増の360億ドルでシェア23.3%へと微増した。中国のCXMTも99.3%の増収となっており、大手3社が先端ノードへ移行した後に残されたレガシー品の需要を、Nanya、Winbond、PSMCといった成熟プロセス勢が吸収する構図も鮮明になっている。
価格そのものの推移を追うと、汎用DRAMの契約価格は2026年第1四半期に前四半期比90%から95%という記録的な上昇を見せ、第2四半期も58%から63%の上昇が見込まれていた。第3四半期は13%から18%へと上昇率が縮小する見通しだが、依然として二桁の値上がりである。
需要側の主役はAIサーバーだ。LLMの学習と推論の拡大に伴い、HBM3e、LPDDR5X、大容量RDIMMの出荷が同時に伸びている。TrendForceはエージェント型AIアプリケーションの普及が、容量帯を問わずRDIMM需要を前倒しで生んでいるとも指摘する。供給側では、メーカーの在庫が底を打った状態で新規供給がサーバー向けに優先配分されており、ビット出荷全体の伸びは限定的にとどまっている。
供給制約は短期で解けそうにない。TrendForceの試算では、2027年のRDIMMビット供給の伸びは前年比15%から20%程度にとどまり、サーバーCPUの出荷成長に追いつかない。新規ファブの本格稼働は2027年後半から2028年以降とされ、2027年のサーバーDRAM不足はすでに織り込まれつつある。米国のクラウド事業者が複数年の長期供給契約(LTA)を結んで割当を確保しようとしているのは、この見通しへの備えである。
9月10日の急落が示した転換点
一方で、上昇の持続性に疑問符を付ける出来事もあった。9月10日、キオクシアの太田裕社長がメモリ価格について「すでに十分に上がった」との認識を示し、これ以上の値上げはAI需要そのものを損なう可能性があると警告した。データセンター顧客に対して大幅な値上げを求めないよう営業部門に指示したことも明らかにしている。
このコメントを受けてメモリ株は総崩れとなり、SK hynix、Micron、Sandiskがそろって4%前後下落、DRAM ETFも寄り付きで4.1%下げた。同日は米10年債利回りの上昇と原油高も重なっていたため単独要因とは言い切れないが、供給側の当事者が自ら「値上げの打ち止め」を口にしたことのインパクトは小さくない。
TrendForce自身も、第3四半期の契約価格上昇率が縮小する理由として、需要が大容量RDIMMから低容量製品へ一部シフトしていること、そしてPCとスマートフォンの顧客がこれ以上の値上げを吸収しきれなくなっていることを挙げている。すでに長期契約を結んだCSP向けには値上げが効かないという事情もある。価格上昇の余地は、需要の天井によって上から押さえられ始めている。
消費者への波及
この構造は、すでに最終製品の価格に表れている。
TrendForceの分析では、ノートPCのBOMコストに占めるDRAMとNANDの比率は従来10%から18%程度だったが、2026年には20%を超える見込みだ。スマートフォンについてもBOMコストが前年比5%から7%、あるいはそれ以上増加すると予測されており、同社は2026年の世界スマートフォン生産を前年比2%減、ノートPC生産を2.4%減へと下方修正している。値上げが需要を削る局面に入ったという判断である。
国内の自作PC市場でも影響は明確だ。DDR5の32GBキット(16GB×2)は5万円台後半から6万円台という水準が続き、128GBキット(64GB×2)に至っては30万円を超える価格帯に達している。かつて「安い逃げ場」だったDDR4も、32GBで2万円台から3万円台と、1年前の2倍から3倍の水準にある。円安が加われば体感の値上がり幅はさらに大きくなる。スマートフォンについても、主要メーカーが2026年モデルで価格改定やストレージ構成の見直しに踏み切っており、メモリコストの転嫁は実際に始まっている。
数字をどう読むか
一ヶ月で7.85%という上昇率は、AIサーバー需要という実需に裏打ちされている。第2四半期の業界売上高が6割増という事実は、メモリメーカーの収益力が過去のサイクルとは異なる次元に入ったことを示している。
ただしこのETFは、日次で5%以上動くことが珍しくない集中投資型の商品であり、6月の高値からは依然3割近く低い。上昇率の大きさよりも、その数字がどの起点から測られたものかを確認する方が実態に近い。そして価格上昇の勢いは、需要側の負担能力という現実的な天井に近づきつつある。今後の焦点は、キオクシアが示したような供給側の自制がどこまで広がるかだろう。
DRAM指数(日本経済新聞社):
https://www.nikkei.com/nkd/company/us/DRAM/
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