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Steam調査で見える「Intel離れ」と「Windows 11への移行」:市場構造の劇的な転換

Image: unsplash,Steam
PCゲーマーのプラットフォーム選択は急速に変化している。Valveが毎月公開するSteamハードウェア調査によれば、過去5年間でIntelのCPUシェアは81%から55.58%へと劇的に低下した一方で、AMDは19%から44.42%へと急騰している。同時にOSについても、Windows 11がWindows 10を圧倒的に上回り、2025年10月の期限終了を機にゲーマーの大規模な移行が発生した。この現象は単なる製品の入れ替わりではなく、ゲーミングPC市場における根本的な構造転換を示唆している。

Intel市場支配の急速な崩壊:Vmin Shift不安定性の影響

Intelの衰退は加速度的である。直近18ヶ月間(2024年7月~2025年12月)だけで11ポイント以上のシェアを失い、年間ベースでも6.5ポイントの下落を記録している。この急速な転換の最大の要因は、第13・14世代Raptor Lake CPUに潜在していた「Vmin Shift不安定性」問題である。​

2024年初頭に発覚したこの欠陥は、マイクロコードの設計不備により、アイドルないし軽負荷状態でもCPUが過剰な電圧を要求する現象を引き起こした。その結果、電圧と温度の上昇がIA コア内のクロックツリー回路の劣化を招き、システム全体の不安定性につながった。症状は深刻であり、ユーザーは何もオーバークロックを行わない標準的な運用環境下でも、数ヶ月後にランダムなクラッシュやブルースクリーン(BSOD)に直面することになった。​

Intelは最終的に対象CPUに対して3年間の延長保証を提供することで対応したが、既に劣化したチップは修復不可能であり、交換が唯一の解決策となった。このスキャンダルは消費者信頼を著しく損傷させ、ゲーマーコミュニティは安定性で定評のあるAMDへと大規模に流出していった。​

AMD X3D技術による圧倒的なゲーミング性能優位

Intelの衰退と同時進行で、AMDは第2世代3D V-Cache技術を搭載した新型プロセッサで革新的な競争優位を確立している。最新のRyzen 7 9850X3Dはゲーム市場で「最強のゲーミングチップ」として承認され、Intelの最新フラッグシップであるCore Ultra 9 285Kに対して最大27%の性能優位を実現している。​

3D V-Cache技術は、垂直に積層された96MBの超大容量L3キャッシュ設計により、ゲーミング性能に直結するメモリレイテンシを劇的に短縮する。AMDは第2世代では、キャッシュチップレットを処理ダイの下部に移動させることで熱的な課題を解決し、より高い動作クロックを実現するとともに、120W TDPの制約下でのパフォーマンス抽出を最適化した。​

このアーキテクチャ上の革新は、Intelが未だに採用していない技術であり、ゲーマーの購買決定において決定的な要因となっている。特に価格帯が比較的アクセス可能なRyzen 7000シリーズのX3D搭載モデルまで、第5世代(Zen 5)で適用されることにより、AM5プラットフォーム全体での性能価値提案が強化されている。

Arrow Lakeの期待外れとメモリコスト構造の負荷

Intel矢面に立つもう一つの課題は、Arrow Lake世代の市場対応力の不足である。期待された新世代チップは、先行するRaptor Lake Refreshと比較してゲーミング性能で劣後し、Vmin Shift問題の解決を示しながらもゲーマーの支持を獲得できなかった。これは、Intelが製造技術上の課題と設計上の制約に直面していることを示唆している。​

同時に、メモリ市場の構造的な高騰がAMDへの移行を加速させている。DDR5メモリ価格が100%以上上昇する中、AMDの従来型AM4プラットフォームはDDR4への対応を保持しており、予算に制約のあるゲーマーにとって同プラットフォームはコスト効率の高い選択肢となっている。Ryzen 5 5800Xなどの先行世代チップが中古市場でも高値で取引される現象は、この構造的な価格圧力を如実に物語っている。​

Windows 11への「移行」:Windows 10サポート終了による強制的な転換

Windows OSの状況は異なる文脈にある。一般的な「離れ」ではなく、2025年10月14日のWindows 10公式サポート終了に伴う強制的な移行である。SteamのデータからはWindows 11がシェア70.83%に達し、Windows 10は26.70%にまで低下しており、Windows 7はついにSteam統計から消滅した。​

ただし、この数字は市場全体との乖離を示す重要な指標である。一般的なPC市場ではWindows 10が依然として支配的であるが、ゲーマーはWindowsサポート終了期限に対して相対的に高速に対応している。これはゲーマーのハードウェア更新頻度がより高く、比較的新しいマシンスペックを保有していることを示唆している。また、Windows 11のDirectX 12技術(DirectStorageやレイトレーシング最適化)がゲーミング体験を実質的に向上させることも、採用速度を加速させている要因である。​

Windows 10ユーザーの26.70%が残存する理由は、Windows 11非対応ハードウェアの存在と、記述されたメモリ・ストレージの高騰によるPC買い替え困難性にある。この構造は、Intelの衰退とも連環している。新規PC購入を先延ばしできるユーザーはWindows 10に留まり、買い替え時にAMDプラットフォームに流出するという循環が形成されている。

Linux成長の限界と位置付け

注目すべき現象として、Linuxのシェアが2025年10月に初めて3%を突破し、12月時点で3.58%(修正後)に到達した。しかし、これは市場の劇的な転換というより、Steam Deckの成功によるニッチ分野の拡大として理解すべきである。Linuxユーザーの約26%がSteam Deckであり、ハンドヘルドゲーミングデバイス市場との重複が顕著である。​

市場構造転換の含意と将来展望

この劇的な転変は、以下の重要な含意を有している:

技術信頼性の市場への影響:Vmin Shift問題のような基本的な品質問題は、長期的な市場ポジションを根本から蝕む力を持つ。Intelの5年間での四半世紀のシェア喪失は、製品の機能差異ではなく、信頼度そのものへの市場の判断を反映している。

アーキテクチャ革新の必要性:AMDの3D V-Cache技術の成功は、ゲーミング市場において異なる設計哲学(マルチコア・マルチスレッドへの傾斜)が既存の高クロック戦略より優位性を持つことを実証した。この転換はマイクロプロセッサ産業における長期的なトレンド転換の前兆かもしれない。

プラットフォーム統合の意義:メモリコスト構造がプロセッサ選択に与える影響は、従来の単一要素によるベンチマーク比較を超えた、システム全体での経済合理性の重要性を浮き彫りにしている。

2024年から2025年にかけてのSteam調査が示す構造転換は、単なるプロダクトサイクルではなく、ゲーミングPC市場における権力構造そのものの再編を意味している。Intelの対応能力と市場信頼の回復が急務となる一方で、AMDはこの機会を最大限に活用して市場支配を確立しつつある。

IntelCoreUltraSeries3が発表、ゲーミング性能やマルチスレッド性能もアップ

Images:Unsplash (BoliviaIntelgente)

Intel Core Ultra Series 3(パンサーレイク)の詳細内容

Intel Core Ultra Series 3は、2026年1月5日のCES 2026で正式に発表されたIntelの最新モバイルプロセッサプラットフォームです。本記事では、このシリーズの全貌を、アーキテクチャ、性能、製造技術、対応デバイスの観点から包括的に解説します。

革新的なプロセス技術:Intel 18A

Core Ultra Series 3の最大の特徴は、米国内で設計・製造される業界初の先端ノードであるIntel 18Aプロセスを採用している点です。このプロセス技術には、第2世代RibbonFET(ゲート全周ゲート)トランジスタと、業界初となるPowerViaバックサイド電力供給技術が実装されています。​

Intel 18Aの性能向上は顕著です。Intel 3プロセスとの比較では、同一電圧(1.1V)で最大25%の性能向上を実現し、同一周波数で36%の消費電力削減を達成しています。さらに、トランジスタ密度は30%増加し、回路面積は28%削減されています。PowerViaの導入により、バックサイド電力配信が従来のフロントサイド配信よりも優れた電圧ドループ低減(最大10倍)を実現し、これが全体のISO-パワー性能を15%向上させています。​

プロセッサラインアップと仕様

Core Ultra Series 3は、3つの主要なCPUコア構成を持つ、多層的なSKUラインアップを提供しています。最高位の16コア構成では、4つのパフォーマンスコア(Pコア)、8つの効率コア(Eコア)、4つの低電力効率コア(LP-Eコア)が組み合わされています。中位の12コア構成では、4P + 4E + 4LP-Eとなり、エントリーレベルモデルは8コアまたは6コアで構成されています。​

フラグシップモデル:
Core Ultra X9 388Hは最上位SKUで、16個のCPUコア、最大5.1 GHz のターボクロック、12個のXe3 GPUコア、50 TOPS のNPUを搭載しています。同様に、Core Ultra X7 358Hも16コアで4.8 GHzまで加速し、ほぼ同等のGPU/NPU仕様を持つハイエンド向けプロセッサです。​

中位および標準モデル:
Core Ultra 9 386H(4.9 GHz、16コア)、Core Ultra 7 356H(4.7 GHz、12コア)、Core Ultra 5 336Hなどの標準シリーズは、ゲーミング、生産性、AI処理のバランスが取れたニーズに対応します。

エントリーレベル:
Core Ultra 3シリーズは、8コアまたは6コア構成で、予算重視のユーザーおよび薄型デバイス向けに設計されています。

統合GPU:Arc B390とXe3アーキテクチャ

Arc B390 GPUは、Intelがモバイルプロセッサに統合した最高性能のグラフィックスユニットです。12個のXe3コアで構成され、96個の計算ユニット(CU)と1,536個のALUを提供します。​

Lunar Lake(Arc 140V)比較では50%を超える性能向上を実現し、Arrow Lake(Arc 140T)比較では40%以上のパフォーマンス/ワット改善を達成しています。新しいメディアエンジンはAV1エンコード/デコード、VVCデコード、AVC 10ビットをサポートしており、次世代メディアフォーマットへの対応が整備されています。​

特に注目すべきはXeSS 3(Xe Super Sampling)の統合です。これにより、マルチフレーム生成と超解像度化をGPU内で実行可能になり、例えばBattlefield 6をOverkill設定で1080p 147 fpsで実行できると報告されています。​

統合AI加速:170 TOPS プラットフォーム

Core Ultra Series 3は、専用のNPU、Arc B390 GPU、CPU内のベクトルユニットの3つのAIエンジンを統合しており、組み合わせ時の最大AI処理能力は170 TOPSに達します。​

NPU 5: 最大50 TOPS の持続的、低電力なオンデバイスAI処理に特化。顔認識、音声認識、画像生成などのリアルタイムタスクに最適化されています。

Arc B390 GPU: 最大120 TOPS のAI処理能力で、視覚言語モデル、視覚言語アクション(VLA)モデル、大規模言語モデル(LLM)処理に貢献。

このアーキテクチャにより、クラウドコンピューティング依存を減らし、エッジデバイスでのローカルAI処理が実現されます。これは意思決定の迅速化、データ転送コスト削減、総所有コスト(TCO)の改善につながります。NVIDIA Jetson AGX Orinとの競争比較では、Intelのソリューションは最大1.9倍のLLM性能向上、2.3倍のパフォーマンス/ワット改善、4.5倍のVLAモデル処理スループット向上を実現しています。​

性能と消費電力

Core Ultra Series 3は、前世代のLunar Lakeと比較して、25W動作時に60%のマルチスレッド性能改善と77%のゲーミング性能向上を達成しています。このゲーミング性能向上は、1080p高設定環境下における45タイトルのゲームの幾何平均で測定されており、ゲーミングノートPC市場での競争力を大幅に強化しています。​

消費電力構成は、全SKUで基本25Wの設定となり、ターボモード時に55~65W(SKU依存)に上昇します。この効率的な電力管理と18Aプロセスの改善により、Intelは最大27時間の実装動作時間(Netflix 1080pストリーミング)を実現しています。​

メモリとコネクティビティ

Core Ultra Series 3は、最大96GBのメモリ容量をサポートし、DDR5 5600+ または LPDDR5X-8533/9600の高速メモリ規格に対応しています。これにより、AI処理とマルチメディア編集などの高負荷タスクに対応できるメモリ帯域幅が確保されています。​

接続性については、Thunderbolt 4とThunderbolt 5の両方をサポートし、PCIe 4.0(8x)とPCIe 5.0(4x)の組み合わせで最大20レーンをサポートしています。WiFi 7(5 Gig)統合により、ワイヤレス接続の帯域幅制限が軽減されます。エンタープライズ向けには、vProプラットフォームとSIPP(Security in Platform and Processor)認定を提供しており、管理性と企業セキュリティ要件への適合が確保されています。​

エッジおよび産業用途への展開

Core Ultra Series 3は、PCプロセッサとしての役割だけでなく、初めてエッジ・産業用途向けの認定を取得しました。拡張温度範囲(-40°C~+100°C)、決定論的性能、24/7の信頼性を備えたこれらのプロセッサは、ロボティクス、スマートシティ、自動化、ヘルスケア分野での展開が想定されています。​

エッジAI処理での性能上の優位性は明確で、リアルタイム欠陥検査、予測保全、インテリジェント監視などの応用では、統合化されたSoC設計(個別のCPU/GPU/NPUアーキテクチャに比べて)による総所有コスト削減が実現されます。

市場展開と可用性

Intelは、200以上のOEMパートナーからのデバイス設計を発表しており、Core Ultra Series 3は同社の過去最大規模のAI PC展開となります。消費者向けノートパソコンのプレオーダーは2026年1月6日に開始され、全世界での販売開始は1月27日です。2026年上半期を通じて、追加的なデバイス設計が次々と市場投入される予定です。​

エッジシステムはQ2 2026から利用可能となり、産業セクターにおける広範な採用が見込まれています。Dell、Lenovo、ASUSなどの主要OEMから、標準的なコンシューマー向けノートパソコンからハイパフォーマンスクリエイターノートパソコンまで、幅広いティアのデバイスが予定されています。

戦略的位置付けと市場への影響

Intelにとって、Core Ultra Series 3の発表は、モバイルプロセッサ市場における競争力回復の重要なマイルストーンです。18Aプロセスの米国内製造というナショナリティ、統合AIプラットフォーム(170 TOPS)、3層コアアーキテクチャ(P/E/LP-E)による最適化されたパフォーマンス/ワット比は、AMD Strix Pointおよび将来のArm系プロセッサとの直接的な競争における明確な差別化要因となります。

PC産業では、AI機能の必要性が急速に高まっており、Copilot+ PC要件への準拠に加えて、ローカルAI処理の実行効率がユーザー体験の中心的な要素となりつつあります。Core Ultra Series 3は、このトレンドに対する包括的なソリューションを提供し、2026年のAI PC普及における重要な触媒となると考えられます。


主要参考資料: