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Intel Core Ultra Series 3(パンサーレイク)の詳細内容

Intel Core Ultra Series 3は、2026年1月5日のCES 2026で正式に発表されたIntelの最新モバイルプロセッサプラットフォームです。本記事では、このシリーズの全貌を、アーキテクチャ、性能、製造技術、対応デバイスの観点から包括的に解説します。

革新的なプロセス技術:Intel 18A

Core Ultra Series 3の最大の特徴は、米国内で設計・製造される業界初の先端ノードであるIntel 18Aプロセスを採用している点です。このプロセス技術には、第2世代RibbonFET(ゲート全周ゲート)トランジスタと、業界初となるPowerViaバックサイド電力供給技術が実装されています。​

Intel 18Aの性能向上は顕著です。Intel 3プロセスとの比較では、同一電圧(1.1V)で最大25%の性能向上を実現し、同一周波数で36%の消費電力削減を達成しています。さらに、トランジスタ密度は30%増加し、回路面積は28%削減されています。PowerViaの導入により、バックサイド電力配信が従来のフロントサイド配信よりも優れた電圧ドループ低減(最大10倍)を実現し、これが全体のISO-パワー性能を15%向上させています。​

プロセッサラインアップと仕様

Core Ultra Series 3は、3つの主要なCPUコア構成を持つ、多層的なSKUラインアップを提供しています。最高位の16コア構成では、4つのパフォーマンスコア(Pコア)、8つの効率コア(Eコア)、4つの低電力効率コア(LP-Eコア)が組み合わされています。中位の12コア構成では、4P + 4E + 4LP-Eとなり、エントリーレベルモデルは8コアまたは6コアで構成されています。​

フラグシップモデル:
Core Ultra X9 388Hは最上位SKUで、16個のCPUコア、最大5.1 GHz のターボクロック、12個のXe3 GPUコア、50 TOPS のNPUを搭載しています。同様に、Core Ultra X7 358Hも16コアで4.8 GHzまで加速し、ほぼ同等のGPU/NPU仕様を持つハイエンド向けプロセッサです。​

中位および標準モデル:
Core Ultra 9 386H(4.9 GHz、16コア)、Core Ultra 7 356H(4.7 GHz、12コア)、Core Ultra 5 336Hなどの標準シリーズは、ゲーミング、生産性、AI処理のバランスが取れたニーズに対応します。

エントリーレベル:
Core Ultra 3シリーズは、8コアまたは6コア構成で、予算重視のユーザーおよび薄型デバイス向けに設計されています。

統合GPU:Arc B390とXe3アーキテクチャ

Arc B390 GPUは、Intelがモバイルプロセッサに統合した最高性能のグラフィックスユニットです。12個のXe3コアで構成され、96個の計算ユニット(CU)と1,536個のALUを提供します。​

Lunar Lake(Arc 140V)比較では50%を超える性能向上を実現し、Arrow Lake(Arc 140T)比較では40%以上のパフォーマンス/ワット改善を達成しています。新しいメディアエンジンはAV1エンコード/デコード、VVCデコード、AVC 10ビットをサポートしており、次世代メディアフォーマットへの対応が整備されています。​

特に注目すべきはXeSS 3(Xe Super Sampling)の統合です。これにより、マルチフレーム生成と超解像度化をGPU内で実行可能になり、例えばBattlefield 6をOverkill設定で1080p 147 fpsで実行できると報告されています。​

統合AI加速:170 TOPS プラットフォーム

Core Ultra Series 3は、専用のNPU、Arc B390 GPU、CPU内のベクトルユニットの3つのAIエンジンを統合しており、組み合わせ時の最大AI処理能力は170 TOPSに達します。​

NPU 5: 最大50 TOPS の持続的、低電力なオンデバイスAI処理に特化。顔認識、音声認識、画像生成などのリアルタイムタスクに最適化されています。

Arc B390 GPU: 最大120 TOPS のAI処理能力で、視覚言語モデル、視覚言語アクション(VLA)モデル、大規模言語モデル(LLM)処理に貢献。

このアーキテクチャにより、クラウドコンピューティング依存を減らし、エッジデバイスでのローカルAI処理が実現されます。これは意思決定の迅速化、データ転送コスト削減、総所有コスト(TCO)の改善につながります。NVIDIA Jetson AGX Orinとの競争比較では、Intelのソリューションは最大1.9倍のLLM性能向上、2.3倍のパフォーマンス/ワット改善、4.5倍のVLAモデル処理スループット向上を実現しています。​

性能と消費電力

Core Ultra Series 3は、前世代のLunar Lakeと比較して、25W動作時に60%のマルチスレッド性能改善と77%のゲーミング性能向上を達成しています。このゲーミング性能向上は、1080p高設定環境下における45タイトルのゲームの幾何平均で測定されており、ゲーミングノートPC市場での競争力を大幅に強化しています。​

消費電力構成は、全SKUで基本25Wの設定となり、ターボモード時に55~65W(SKU依存)に上昇します。この効率的な電力管理と18Aプロセスの改善により、Intelは最大27時間の実装動作時間(Netflix 1080pストリーミング)を実現しています。​

メモリとコネクティビティ

Core Ultra Series 3は、最大96GBのメモリ容量をサポートし、DDR5 5600+ または LPDDR5X-8533/9600の高速メモリ規格に対応しています。これにより、AI処理とマルチメディア編集などの高負荷タスクに対応できるメモリ帯域幅が確保されています。​

接続性については、Thunderbolt 4とThunderbolt 5の両方をサポートし、PCIe 4.0(8x)とPCIe 5.0(4x)の組み合わせで最大20レーンをサポートしています。WiFi 7(5 Gig)統合により、ワイヤレス接続の帯域幅制限が軽減されます。エンタープライズ向けには、vProプラットフォームとSIPP(Security in Platform and Processor)認定を提供しており、管理性と企業セキュリティ要件への適合が確保されています。​

エッジおよび産業用途への展開

Core Ultra Series 3は、PCプロセッサとしての役割だけでなく、初めてエッジ・産業用途向けの認定を取得しました。拡張温度範囲(-40°C~+100°C)、決定論的性能、24/7の信頼性を備えたこれらのプロセッサは、ロボティクス、スマートシティ、自動化、ヘルスケア分野での展開が想定されています。​

エッジAI処理での性能上の優位性は明確で、リアルタイム欠陥検査、予測保全、インテリジェント監視などの応用では、統合化されたSoC設計(個別のCPU/GPU/NPUアーキテクチャに比べて)による総所有コスト削減が実現されます。

市場展開と可用性

Intelは、200以上のOEMパートナーからのデバイス設計を発表しており、Core Ultra Series 3は同社の過去最大規模のAI PC展開となります。消費者向けノートパソコンのプレオーダーは2026年1月6日に開始され、全世界での販売開始は1月27日です。2026年上半期を通じて、追加的なデバイス設計が次々と市場投入される予定です。​

エッジシステムはQ2 2026から利用可能となり、産業セクターにおける広範な採用が見込まれています。Dell、Lenovo、ASUSなどの主要OEMから、標準的なコンシューマー向けノートパソコンからハイパフォーマンスクリエイターノートパソコンまで、幅広いティアのデバイスが予定されています。

戦略的位置付けと市場への影響

Intelにとって、Core Ultra Series 3の発表は、モバイルプロセッサ市場における競争力回復の重要なマイルストーンです。18Aプロセスの米国内製造というナショナリティ、統合AIプラットフォーム(170 TOPS)、3層コアアーキテクチャ(P/E/LP-E)による最適化されたパフォーマンス/ワット比は、AMD Strix Pointおよび将来のArm系プロセッサとの直接的な競争における明確な差別化要因となります。

PC産業では、AI機能の必要性が急速に高まっており、Copilot+ PC要件への準拠に加えて、ローカルAI処理の実行効率がユーザー体験の中心的な要素となりつつあります。Core Ultra Series 3は、このトレンドに対する包括的なソリューションを提供し、2026年のAI PC普及における重要な触媒となると考えられます。


主要参考資料: